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11月の双子

アイココのブログ

『雪のじいさん神さまのお話』

アイココの童話

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とある島に、雪の神さまがいます。

雪のように白いひげと 眉毛は ふさふさと長く、風に揺れては銀色に輝きます。

 

雪を降らす時、万物に公平である神さまは、ただ、雪を降らせます。

その冬の間に、雪にしなければいけない雪水晶が、じいさんの元にどんどん運ばれてくるのです。

 

神さまたちの長である、大神さまの打つ太鼓の拍子に合わせて、様々な雪を降らせます。

 

どんなに雪が積もり氷に閉ざされても、じいさん神さまの目には、植物や、動物や、人々の暮らしが見えます。

どんなにビュウビュウ吹雪いても、じいさん神さまの耳には、植物や、動物や、人々の声が聞こえます。

 

「じいさんや、雪が重すぎて枝が折れてしまうよ」

かりんの木が言いました。

 

「じいさんや、もう木の皮もなく食べるものがない、雪も氷も勘弁しておくれ」

山の鹿が言いました。

 

「神さまよう、俺たち何か悪いことしたのか。

 実りの少なかった秋の次にこの雪じゃ、俺たちいよいよだ、神さまよう」

里の人々が言いました。

 

でも雪のじいさん神さまは、黙々と仕事をします。

雪水晶が、風の神さまの使いによって、どんどん、じいさん神さまの足元に積まれていきます。

ひと山向こうまで見通せそうに透明で、それでいて覗き込めばこちらの瞳が碧くなりそうな雪水晶を、じいさん神さまが両手に包み ふうっ、と息を吹きかけます。

じいさん神さまの皺の深い大きな手の平から、生まれたての雪が山へ里へと飛び立っていきます。

 

そのようにして、運ばれて来る雪水晶をちゃんと雪にしなくては

大神さまの太鼓と、雪のじいさん神さまの仕事の拍子が合わなくなり

そんな日が長く続くと、命という命が生きられない世界ができてしまうのです。

 

とても心優しいじいさん神さまのために、大神さまは一週間だけ、生き物達のために泣いてよいと言いました。

 

初雪の一週間前には、どこにどれほど雪を降らせ、どれほど吹雪き、どんなに山を里を凍てつかせるか、じいさん神様には、このひと冬の様子がわかります。

 

 すまんのう、かりんの木よ

 湿ったあの雪、どんなにか重かろう

 

 すまんのう、山の鹿よ

 腹を空かせたその身に、吹雪が痛かろう

 

 すまんのう、人間よ

 身動き取れぬほどの雪の中

 それでもわしに祈ってくれるのか

 

 子を守り、田畑を守るため

 残り少ない米を団子を

 わしに捧げてくれるのか

 

じいさん神さまは、ぽろぽろ、ぽろぽろ涙を流します。

涙が ふさふさの白く長いひげをつたい落ちるころ、

ひげの先から小さな小さな生き物が、ふわふわと優しく飛んでいきます。

 

お尻に雪のような綿毛をつけた、小さな雪虫です。

 

じいさん神さまの涙は、ひげをつたい落ちる間に雪虫となり、山へ里へ飛び立ち

かりんの木や鹿や人々のまわりを、優しくふわふわ飛ぶのです。

 

冬らしく冷たくなった風に身を縮こませていた植物も、動物も、人々も、

かわいい綿毛をつけた雪虫がふわふわ舞うと

 

「じいさん神さま、今年も泣いているのかい」

と、雪虫に話しかけるのです。

 

「じいさんや、去年より幹も太くなったんだ、がんばるさ」

雪虫が飛ぶと、かりんの木が、言います。

 

「じいさんや、それがあんたの仕事だろう、気にしなさんな」

雪虫が飛ぶと、山の鹿が、言います。

 

「神さまよう、そんなに泣くなよ、わかってるさ。

 俺たちはあんたに生かされてるんだ」

雪虫が飛ぶと、里の人々が、言います。

 

じいさん神さまは 生き物達のことを思い、

一週間 泣いて泣いて泣き続け、

たくさんの雪虫達がじいさん神さまの思いを伝えます。

 

あなたの手の平にとまった その雪虫

じいさん神さまの優しい涙なのです。

 

ぴーんと澄んだ空気の張りつめた、世界中の音を一瞬消したようなその朝

白い雪が舞い始めます。

 

生き物達の声を聞きながら、じいさん神さまがあっちへこっちへ、雪を降らせます。

 

心優しい 雪のじいさん神さまのお話でした。

 

 

《終わり》

 

 

 

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( こちらは北海道によく生えているナナカマドの木。雪が積もると赤と白が美しいです。

 冒頭の写真は道南にある駒ヶ岳

 3年ほど前に書いた童話の存在を思い出し、特に日の目を見ていないので(笑)今はすでに春ですがUPしてみました)